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Mud bath, aromatherapy and nail varnish's it's a dog's life
泥パック、アロマテラピー、マニキュア・・・これ、犬の暮らしです
リチャード ロイド パリー 東京
Merry Do Natural Mud、決して安くはないけれど、その配合成分の複雑さを見れば納得。海藻抽出エキスにホホバオイル、サポニンにスクワラン。トクサエッセンスに合わせる泥は、死海、ドイツ沿岸、日本南西の海から取り寄せられたもの。実はこの美容商品の非凡さは、その値段ではなく、ターゲットの層に。1回13,215円(67ポンド)というお値段で、Natural Mudは最高峰のデラックスビューティーセラピー。贅沢な日本人女性向けなのではなく、なんとそのペット向け。ドレッシング、グルーミングに尽くせる限りの贅を尽くしてしまった感のある日本のペット美容業界の、動物向け泥パックやマニキュアを含む、新境地開拓である。
出だしは順調、去年の販売開始から既にフランス、ドイツ、中国、台湾、シンガポール、タイ、マレーシア、ニュージーランド、そしてオーストラリアに商品が出回る。現在、イギリス進出プランも進行中。
「ペットエステの哲学は、ペットを丸ごと(完全に)美しくすることです。そしてそれは、情緒(感情)のケアから始まります」 Merry Doのウェブサイトはこう謳う。「そして、科学的見地との調和の中に、アロマテラピー、タラソテラピー等をペットにもたらすものです」
「ペットサロンの利用は、インテリ層を中心に、普及、浸透しています。」と、ペットエステ製造・販売元 メリードゥビューティプロダクツ株式会社の社長、津野田正弘氏。「彼等にとって、ペットはペット以上の存在、家族の一員です。ですから、当然、ペットにも自分達と同じような待遇をする事を考えるようになり、それをすることを通じて、自分達もまた癒されるというわけです」
東京のペットエステ使用サロン ポンポリース(ペットビューティーパーラー)の『ペット・エステティシャン』チンダミホ氏によると、一月に30~40人が、ペットエステのサービス(レンジ)を利用するという。チンダ氏はこう続ける。「一度エステを体験したお客様は、温泉セラピーや泥パックの後にペットの毛並みが柔らかくなったり、肌がすべすべになることに気付かれます。また、犬は、パックやマッサージの後に気持良さそうにするのです。猫は犬に比べると、少々扱い辛いのですが」
ペット用ネイルカラーのレンジは10色(ラメからレモンイエローまで)、マイルドアミノ酸シャンプー、香り高いオウ・ド・トワレ、雪道や凍結した地面、ワックスのかかったフローリング上での転倒事故を防ぐ「肉球滑り止めスプレー」等の商品を誇る。原料は全てナチュラル。犬科の動物に多いアレルギーへの対策だ。「最近は、ペットにもアレルギーが増えています」津野田氏は言う。「彼等にとって、科学物質は決して良いものではありません」
値段は犬の被毛量とサイズにより異なる。小型のチワワやダックスフンドの温泉セラピーが2,625円との安さなのに比べ、コッカースパニエルに同様のトリートメント、プラス泥パックとヘアカットを施すとなると、19,425円にもなる。
ここ5年あまりの間、日本では、ペットケアが爆発的に流行しており、帽子やジャケットをまとい、サングラスをした犬達は東京では日常風景と化し、犬のヌード姿がショッキングなものに思える程だ。
専門家の中には、この現象を人間の少子化と結び付ける声もある。今週発表された調査結果によると、日本人女性が生涯にもうける子供の数の平均値が、1.29人まで落ち込んだのだ。記録に残る情報を見る限りでは、史上最少の数値である。
しかし、ペット崇拝の傾向は、歴史にも顕著に現れていたのだ。時は17世紀、日本の5代目将軍徳川綱吉は、犬に危害を加えた者を厳しく罰し、日本で初の犬小屋(犬の家)を建て、後に犬将軍として知られることとなる。
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